2021年7月17日土曜日

熱海市の土砂災害の法的規制 森林法の運用について

 本日のNHKニュースでの解説

問題は、熱海市、静岡県の規制の弱さ、国の(規制)不作為があると言っていた。

確かに、静岡県の土採取条例は届出で済んでしまい、完了検査さえもない条例であり、こんなもの規制と言えるか分からないものである。盛土形状をチェックすることもできないだろう。かといって、土砂はどんどん積まれる、産廃は入る、で熱海市の担当職員は相当な苦労をしただろう。こんなことになって、正直一生思い悩むことになるかもしれない。いや、なるだろう。

熱海市が盛土条例を備えなかったことは熱海市全体の問題だろう。NHKは国の法制化が急務だ、条例を備えても、熱海市のように条例がない自治体に盛土を増やしかねない、という静岡県のある富士山麓の自治体職員の声を紹介していた。

条例は、頑張っても罰金100万円である。産廃のように3億円の罰金に対応させるためには法律でないとダメだ、法制化を、とNHKは締め括っていた。

ある意味同意するし間違ったことは言っていないんだが、いやいや報道諸君はまだわかっていない。

この事件の本質はどこにあるか。盛土ではない。静岡県の古い条例なんだから、業者に対峙し闘える条例になっていないんだから、条例変えなきゃダメだ、国による法制化を、確かに間違っていない。建設残土の規制、国は今までまったく関わろうとしていなかった。それもあるけど本質は違う。

少なくともこの事件の本質は、森林法と廃掃法にあったと思う。まず、1haを超える森林法違反があり林地開発申請、許可を適用できるタイミングがあったのに、わざわざ植林を行わせ、面積要件である1haを切らせて小規模林地開発にさせてしまい、熱海市に届出で済ませるように県が誘導した、ということがわかってきている。その結果『申請・許可』のステージに持ち込めなかった。

もっと分解して言うと、ここには、構造的に二つの問題がある。まず、森林法の『林地開発』制度の転用制度が、1ha以上であると言う点である。これは脱法行為の温床となるし、熱海のように開発関連の規制が弱い自治体には何の規制もかからないことになってしまうので、林地開発の規制は例えば、500㎡、1,000㎡でかかるように改めるべきだろう。今回の分析では、森林法単独で規制できるチャンスがあったのだから、どこに問題があったか、林野庁はしっかりと検証してもらいたい。特に、形質変更面積や伐採抜根面積が1ha以上あったのに、規制ができなかった。これは森林法の存在を否定させるくらいのインパクトがある。

もうひとつは、静岡県の権限移譲が問題である。今回のように、実質1ha以上の形質変更に対し、県が『植林をすれば林地開発にはなりません。届出で済みます。あとは熱海市さんよろしく。』とこういう社会と公益に対し重大な結末をもたらした事案を、事実上ステージにも登場せず、水面下で済ましてしまった点があることを指摘したい。これは県で検証してもらいたいところである。

報道諸君は、盛土規制の不備をとらえて報道しているが、方向性が違う。規制がかけられるのにそういう運用しなかったのが問題なのである。盛土の県内各自治体の規制は『森林法で許可が出るなら、盛土条例は適用除外』である。この構造に早く気づいてもらいたい。要するに、今回の本丸は業務の規制法である森林法であり、運用に問題があったことをまず、考えるべきである。

また、廃掃法も許可として取り扱う事案だったと思うし、今回の行為を止められる規制だったと思うのだが、これは情報が伝わってきていないので、これ以上書けない。

いずれにしても、今回の行為をもし止められた、ならどの規制か、という意味でこの拙論を書かせていただいた。結論としては、森林法と産廃規制であり、盛土規制は実のところ今回の主役ではない。

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