2014年5月3日土曜日

自治体の総合窓口化について(批判的考察)

まず、総合窓口の現状を説明する。
総合窓口とは、従来の市民課(住民基本台帳業務)を中心とする業務を拡大させたものをいう。
住民基本台帳業務は、主に異動業務と証明業務の2つに大別されるが、それぞれに総合窓口のエッセンスを加えることができる。
1 住民異動業務 … 従来の異動業務に加え、国民健康保険、高齢受給者証、国民年金、後期高齢、介護保険といった業務のうち、資格処理、交付を加えたものをいう。
2 証明発行業務 … 戸籍、住基の証明書発行業務に加え、税各種証明などを加えたものをいう。
また、総合窓口を支援するために、総合窓口パッケージが販売されている。
これらは、自治体ワンストップサービスに対し、有効である、とよく言われる。総合窓口への移行については、パッケージが伴うことから電算所管課により主導されることが多く、庁内的に立場の弱い?市民課はそれに従わざるを得ないという構図が実はある。その反面、業務原課は日常の煩雑な業務から解放されることにつながるので、歓迎することなるのは目に見える。

私は、大学で行政学を専攻した人間である。その立場からいうと自治体総合窓口化については反対である。『何でもやる課』がもてはやされて久しいが、これは一面では『事務分掌』や『行政手続き』を無視することにつながる。それと同様な結末が待ち受けているようにも思える。市民課で各種サービスが住民異動処理に絡んで行われるため、『一般的』なことしか行えず、細かい処理に行き届かない。その結果、給付や税賦課や料金を誤った時に、誰が謝罪するのか、誰が責任をとるのか、不明確と言わざるを得ない。
それでも総合窓口を実施したとしよう。
事務分掌は例えば、次のように変更される。
(1) 市民が満足する窓口サービスを提供するため、戸籍法、住民基本台帳法等に係る届出受理、国民健康保険等に係る資格の取得喪失等に係る受付及び処理、身分関係及び居住関係を公証する戸籍、住民票等に係る証明書の交付並びに埋火葬等の許可を一元的に行うこと。
(2) 市民の利便性の向上を図るため、住民異動、戸籍異動等に伴い発生する他課の窓口事務のうち、協議により処理することとなつた事務を一元的に行うこと
とある市の例である。
先ほども『何でもなる課』を紹介したが、それに似たような…、何でもありな状況になっている。その上、『一元的』『協議により処理』という一文があることから、結局は定め切れていない部分が見受けられる。
明らかにこれは、法律を学習した職員が起案した文章ではない。事務分掌というものは、行政サービスを前提とするものではなく、まず、侵害行政により市民の権利を違法不当に侵害しないことに重点を置かなければいけない。そのあとに行政サービスを規定すべきだろう。あくまでワンストップだけが念頭にあって、いいことだけを書いている。要は、事務分掌なるものは『列挙』しなければ事務分掌とは言えない。
また、『手続き』や『細かい適用』『細かい説明』を考えると、最初から業務原課で業務をやることが『行政サービス』の実現であり、それらは裏返すと侵害行政に直結するのであって、前述の通り処理の範囲と責任の所在を事務分掌で定めておく必要がある。
私の考え方としては、仕事の最初から最後まで面倒を見られることが理想であって、責任の所在が不明確な総合窓口は決して理想ではないことを言わせてほしい。電算機のメーカーが儲かるだけでいいことは特にない。

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