転載元 静岡県 http://www.pref.shizuoka.jp/kensetsu/ke-520a/documents/kaihenkoui1.pdf
2007.3.9 A社が熱海市に県土採取等規制条例に基づく土の採取計画届出書を市に提出(面積 0.9446ha、盛土量 36,276 ㎥、受理書交付 2007.4.9)→ この時点で、森林法の5条森林に該当するかどうか、本来はチェックしなければならない。静岡県の土採取条例は、森林法の1ha以上の林地開発にその案件が該当すれば、適用除外になるとの定めがあるからだ。土採取担当が届出をまず受けるのではなく、県農林事務所に林地開発になるかどうかを判断してもらい、その結果、林地開発にならなければ熱海市は(森林法側で運用している)小規模林地開発届出と土採取届出を出すように指示をしていくのが正解だろう。また、このように森林法と盛土とが競合する場合は、森林法の適用を優先するのが原則である。これは、県土採取条例が森林法に対する適用限界を明確に定めていることに加え、逆に森林法側は樹木を切るところから始まり、形質変更(盛土)はもとより、その後の「転用」に至るまでの監視義務を負うからだ。盛土の規制条例は、森林法で定める(最初から最後までの)行為のうち、「形質変更」の部分のみを担当することに過ぎない。当然、土採取の届出が出ていた、ということになると、森林法側では「小規模林地開発」(伐採から盛土を含んだ形での形質変更、転用後の姿)の届出が出ていないといけない。
2007.4.27 市から県東部農林事務所に、A社が土地改変面積を拡大したとの通報があり、県東部農林事務所が現地調査。土地改変面積が 1ha 超に拡大されており、県東部農林事務所が林地開発許可違反と判断。(森林法 10 条の2第1項) (この時点では、渓流部に盛土はされていなかった。)→ いつかわからないが渓流部に盛土をしたことはかなり問題。これ以降に変更の届出が出てきているが、図面に「渓流部の盛土」が記載されているか確認が必要である。行政側でどれだけチェックができる体制だったのか、それとも、業者側にかなりの悪意があったのか…。
2007.5.31 県東部農林事務所からA社に、土地改変行為の中止・森林復旧を文書指導(林地開発許可違反面積 1.2329ha)(森林法 10 条の2第1項)→ 受取り方によっては、グッジョブな文章だが、私は、ここが転換点だったと思っている。少なくとも2,329㎡の違反面積があって、なぜ林地開発許可に該当します、申請してください、と指示できなかったのか。これは、違反した部分は山林に復旧すれば、「林地開発」に該当しない、という暗黙ルールが県に存在しているため。しかし、 1.2329haもやっていれば、その後始まる土砂の搬入で、1haを超える面積を「形質変更」するだろう、という危険性はこの時点で排除できないため、今後、違反行為の是正は「林地開発許可」の発動により是正していかなければいけないのではないか、と思う。森林法は「盛土は所管外」の意識が強いと思うが、前述の通り森林法で規制すべき事柄の一つであることは言うまでもない。また、この時点で唯一、「申請・許可」権を発動できる唯一の法令である。残念ながら、現在の森林法の運用は法第1条『もつて国土の保全と国民経済の発展とに資することを目的とする』という意義から乖離しているのでは、と思ってしまう。
2008.8.7 県東部農林事務所が、植栽、種子吹付、丸太木柵工を確認。 (2007.5.31 県指導の)林地開発許可違反の是正が完了。(森林法 10 条の2 第1項) → これは盛土施行前だけに行い「いいですよ」という性質のものではない。森林法側としては、1haという区切りがあるので、盛土施行後にもこの確認は行うべきである。盛土を所管外ととらえていた証拠ではないか、と思う。ただ、種子吹付を行うところは通常盛土部であり、もし、形質変更をした部分で吹付をして開発面積から除外するようなことをしていれば、かなりまずい指導となるのではないか。林地開発になるかならないかの瀬戸際のところで「種子吹付」をしてくれれば開発面積から除外します、という指導を行ったことになる。ここは要確認である。土砂の搬入は下記の2009.3.19から、であるが、この時点で盛土があったことを匂わす文脈である。
2009.3.19 A社が土砂の搬入を開始
2009.7.2 市がA社(行為者)・B社(施工業者)を指導(防災措置と改変面積の求積) → ここで違和感がある。担当者は現場を見た上で、「こんなところまでやっているはずではない。」と感じ、「面積拡げた?」と問いかけたはずである。その結果、変更届出せ、ということになったと思うのだが、当初の届出面積から 250㎡しか拡がっていない。1ha近い面積で山林かつ斜面部の形質変更250㎡をよく見抜けたな、と思うが、感覚としては、もっと広い面積に対し「形質変更」があったのではないか、と推測する。少なくとも、1haを超えた面積の盛土は「林地開発申請」となるので、担当者がそのことに気づいていたのか、業者側が悪意で面積を削って窓口で1haを超えてない、と担当者を恫喝したか、とか、まあ、いろいろと勘ぐってしまう。決して推測で言ってはいけないとは思うものの、このあたりの当事者のやり取りとか気持ちについては、後々争点になるだろう。また、両罰規定(第19条)により届出を担当した行政書士も今となっては覚悟をしなければならない事案だ。
2009.12.9 A社が熱海市に県土採取等規制条例に基づく土の採取等変更届(第1回) (面積 0.9696ha、盛土量 36,641 ㎥ 工期限 2010.4.8 工法:ロックフィル→土堰堤)
2009.12.10 県土採取等規制条例に基づく土の採取等変更届(第1回)受理
2010.3.23 A社が熱海市に県土採取等規制条例に基づく土の採取等変更届 (第2回)工期限 2010.4.8⇒2010.7.8
2010.3.23 土採取等規制条例に基づく土の採取等変更届(第2回)受理
2010.8 土採取条例に基づく造成工事が概ね完了(土砂搬入は 2010.6.30 に完了)→ 渓流部を埋めたのはいつなんだろうか。もし公図上の水路であり、盛土図面に施行範囲として記載されていたら、責任の帰結がかなり変わってくると思う。公図上の水路であり、盛土を避けている計画であれば、業者の不適切工事であり、かなりの部分の責任を業者は負うことになる。
2010.8.25 熱海市から盛土の中に産業廃棄物が混じっていることが発覚、市と県東部健康福祉センターが撤去を指導
2010.8.31 県土採取等規制条例に基づいて市が、廃棄物処理法に基づいて県東部健康福祉センターが土砂中に木くずの混入を確認 → 結構、業者側も狡賢い。盛土が始まる前に産廃処分場を作るとなれば申請を出せ、となるが、一応盛土が終わりに近い時期で産廃発覚となれば、盛られた土砂が盛土規制にとって、逆に担保に取られたような形となり『これから先は産廃でやってください』とは言えなくなってしまった、と推察される。盛土担当としては、産廃の許可があれば盛土側の施行監督義務は条例上の仕組みとしては免責される。しかし、産廃は盛土の上にある。逃げようがなかった。逆に、産廃の担当としては、許可できるものかどうか、問答無用なものかどうかをまず考えるが、危険な盛土の上に産廃など到底承服できるものではない。撤去を指示するのは当然だと思うし、さらにこちらは告発体制が整えられているので、業者側も見かけ上は撤去に応じた。しかし現在の産廃担当の体制は、地中にあるのは追わない、という考え方がある。監督権がありながら自ら掘り出すことは通常しないので、あくまで搬出を確認した、らしいが、全て産廃を撤去した、と信じるわけではない。単純に見かけ上の話である。盛土現場では産廃混入がよく言われるが、判別は時として困難であり、ここまでは盛土規制、ここからは産廃というような明確な基準(区分け)が必要であるとも思う。例えば、土砂の中に産廃が混入していれば、産廃担当から中止命令を行い、ゴミは全部撤去させるとか、○%までは運用上okとするのか、など(ゴミをOKすること自体が矛盾ではあるが…)。実は、土砂の搬入では、故意ではないゴミ混入は日常茶飯事であるからだ。今後、盛土の法制化が実現する際には、厚労省と国交省はこの問題をよく話し合ってほしい。
私は、この件を書き始めた時から、これは盛土事件というより森林法と産廃の問題だと言っているが、ここでも同様である。
2010.9.17 市からA社に対し県土採取等規制条例に基づく工事中止と完了届の提出を要請 →工事中止をしろ、と言ってる割には完了届を出せと言う矛盾…。産廃の投棄をやめろ、ということであれば意味は理解できるが盛土側で産廃規制に見紛うような分野に手を出してはいけなかった。余計問題が混乱する。この場合、保健所側に行政命令を発動してもらい、盛土担当としては「盛土が終わってるなら早く完了出せ。」とするべきだった。バタバタだったのか?。
2010.10.8 市からA社に対し県土採取等規制条例に基づく土砂搬入の中止と完了届 の提出要請に従わないことから土砂搬入の中止を要請
2010.11.17 ~ 県東部健康福祉センターの廃棄物処理法に基づく指導により、関連○社 が木くずを搬出したことを確認
2011.2 土地所有者変更(A社⇒C者)→ ここについては、やはり新所有者、旧所有者ともに疑念を持たれる行為である。新所有者側は現在、盛土していることは知らなかったとし、前所有者の行為について『県と相談する』くらいの話をしていると報じられている。言葉通り受け取ると、前の所有者が悪く新しい所有者は本当に知らなかったのかも、と思ってしまうが、もし、新しい所有者は宅地分譲の目的を持ち、『造成してくれれば買うよ』と事前に意思表示があったかもしれない、と思っている。
旧所有者はこの土地で残土を引き受ければついでに儲かるし、造成が完成すれば、実際に林地だが買った時の何倍もの値段を吹っかけても買った時は1㎡あたり何十円、何百円の山林である。儲からないわけがない、ということで計算をしたと思う。旧所有者は盛土(残土処分)+産廃投棄で十分儲かり、あくまで山林目的として『造成』する。林地開発などというリスクは次の所有者が負えば良い、と考えたのではないか。だから、完了後、3か月程度で契約を行い手放せたのである。一般の山林売買としては異例の早業である。新しい所有者は、すぐにでも分譲を行いたかったが、前所有者は林地開発申請・許可を徹底的に回避し小規模林地開発届出で行ってしまった関係で、違反し過去に県農林事務所から指導を受けた部分まで分譲対象にしたかったが(あくまで仮定)、もう形質変更(盛土)面積はぎりぎりだし、ここまで含めるとなると『林地開発』を一回経由しなければならないので、ほとぼりが覚めるまで放置しよう、どうせ税金は山林のままなら安いし、と考えたのではないか。
その推測で分析すると、盛土をしたのは、新所有者の旧所有者に対する『停止条件付売買』がそもそもの発端であり、逆に新所有者は山林からの転用が完了していない『瑕疵物件』を売りつけられた、という『因縁』がある。そのため、新所有者の言動はかなり積極的に見え、堂々と『県と協議』するという意向にも顕著に現れているのではないか。https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000221775.html?&cf=1
あくまで、推論の積み重ねであることを念頭において読んでいただきたい。
※ インターネット上に掲載されている土地登記簿は、途中差押が入っているのだが、どういうことなんだろうか。県発表の情報と異なる。登記簿記載が事実であれば、商談など成立したのか疑問がある。
追記 林地開発にならなかった場合の小規模林地開発の届出について調べていたところ、千葉県がかなりしっかりとやっているようなので、必要書類について引用させていただきたい。静岡県については、確か伐採届に毛が生えた程度の簡便なものだったと記憶している。正直これが同じ法律から出た運用だろうか、と思うくらい違ってきていると思う。また、千葉県については安易に権限移譲せず、県森林事務所で事務を執行しているとのことである。