2013年7月31日水曜日

消費増税で財政は改善されるのか?

まったくきつかった。電算担当だから業務サーバーの入れ替えで、先週から激務+休みなしでやっと休みがとれた。
ということで、朝から研究していたことをひとつ。

安倍晋三首相は、景気回復を頓挫させることなく政府の財政を再建していきたい考えで、消費税引き上げをどのように進めるかを検証するパネル(有識者会合)を設置する見通しだ。

パネルは、経済・財政の有識者で構成される見通しで、甘利明経済財政担当相は30日の記者会見で、パネルは「消費増税に向けてどういうリスクがあり、どう いう対処をすべきかを幅広く聞く機会になる」と述べた。ただし現在はまだ、安倍首相からの指示を待っている段階だと述べた。

 失業率の低下や賃金の上昇はGDPの約60%を占める消費の改善を維持するために欠かせない。だが、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は、消費増税によって起きる需要の減退に企業が対処しようとすれば、一時的に失業率が上昇する可能性があると指摘した。

出典 : ウォール・ストリート・ジャーナル
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323670304578638590089128904.html 

日本人はきっちり計算できる特質にあるので、消費税が3%上がれば、需要が3%下方に動く。需要が少なくなることで供給側(企業側)は供給を3%減らす、ということになる。また、企業は3%縮小再生産となるので、その結果、雇用は3%減少し、その分失業率も増える。全体として経済は3%縮小の方向に動く。
上記の記事中、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎先生は一時的に失業率が上昇する可能性について言及しているが、市井マクロ経済学者(笑)の私に言わせれば、一時的な減退ではなく、永続的な減退となり、可能性ではなく確実な傾向であると言わざるを得ない。

なお、食料品や出生・死亡における経済については、おそらく消費税の経済減退効果は即発生しない。非常に緩やかに発生する。消費税が3%上がったことにより、人は3%食料品出費を抑え、出生率を3%無意識のうちに抑制し、生きている人のうち(表現がちょっとアレであるが…)経済的困難に遭った人は、自ら命を絶つことにつながるだろう。結果として3%人口を抑制することになっていく。まあ、極論だけれども、私の理論はこんな感じで構築されている。確実に夫婦一人あたり一人しか子供を作らない世の中になっていくだろう。

話はそれるが、今のまま消費増税路線を突っ走っている中で若い人に子供をたくさん作ってもらうには、(老齢社会保障の充実も必要であるが)子供の成育に必要な過分の手当も必要である。児童手当なんてもんじゃない。1年あたり100万円渡さないと、若い人に子供を作ってもらえなくなる。それが、所得の再分配というものである。財務省主導の増税路線は、そんな政府の役割でさえ忘れてしまっているようだ。高度経済成長期は行政が企業を税制により監視し、『富の再分配』を労働者に対し行わせていたが、消費税導入以降直接税がどんどん改変され、富が留保されていることが一つの原因ではあるのだが。これがデフレの真の原因である。

さて、こんなことを考えていたら政府の総債務残高の遷移が気になった。債務で経済維持をすることは実は必要なことだし、インフレ、デフレの調整にも使われるくらいなので、日本国民が国債を引き受けているうちは(一方では国民の貯蓄であるので)危険ではないのだけれど、債務の返済のために消費税が使われる、というような理解がちょっと気になったためである。正直、問題がごちゃ混ぜであり、その理解は正しいとはいえない。

ここに政府が示している総財務残高の遷移を示す。
http://ecodb.net/exec/trans_weo.php?d=GGXWDG&c1=JP&s=&e=

ここで示されているのは、政府の放漫財政ぶりである。消費税導入以降の大蔵省のポリシーのなさが示されている。
消費税は1989年(平成元年)に記念すべき3%が初めて実施されたのであるが、それ以降『総債務残高』は確実に(角度を変えて)増え続けているのではないか。

さらに、1997年(平成9年)4月に実施された消費増税(+2%)の分析である。
出典 : http://ecodb.net/exec/trans_weo.php?d=GGXWDG_NGDP&c1=JP&s=&e=

今度は、 政府総債務残高(対GDP比)である。こちらにおいても、1997年から確実に上に折れるような上昇傾向を示したが、2%の増であるので微増といったところか。

結局、消費税は経済に悪影響をもたらし、幸福な国民生活に一定の抑制を与えることは明白であるけれども、政府の負債という局面にも悪影響があるということが立証されている。税額を上げておきながら、惨憺たる話であるが、消費税もだめ、経済もだめ、であれば税の取れる途は閉ざされてしまっているようにも見えるが。

さて、各国がなぜ消費税の導入に踏み切ったか、当時の状況を考えると、案外、意外な理由が見えてくる。消費税は売り上げかなんかか知らないけれどもただ何%かかければ出てくるのであるが、所得税はそういかない。控除があったりするから、制度的に難しいし、サラリーマンを20年以上やっている私でも配偶者控除がいったい何なのかさえわからない。言われたままやっている。
消費税導入時は算盤による計算が主流で、がんばっても計算機によるもので係数を増減したりすると、すべて再計算の世界であった。係数が固定されている消費税の方が『楽』であった。

正直、今はそういう時代ではない。Excelがあるから制度を知らなくても金額を突っ込み、どこに該当するかチェックをするだけで計算はできてしまう。こういう時代に経済全体に悪影響をもたらす消費増税はどうなの、と考えてみたが、まあこれは学説としては偏りすぎ…。ただ、もし消費税がなく、基本的な税制が所得税、法人税、酒税のままであったなら、もしかして、失われた20年はなかったかもしれない。諸外国にはブーブーと文句を言われたに違いないが。

最後に、なぜ消費税が政府公債残高に悪影響を与えたか、ということを論じてみよう。この程度はやはり高校の政治経済レベルで解き明かすことができる。
 以前、消費税は『景気の自動安定装置』を動作不良にする、と述べたことがある。景気が良くなれば、所得が上昇し、累進課税によりその分政府が税収として吸い上げ、景気を結果的に抑制する。吸い上げた金は、公共事業、社会保障などで分配し、日本国中の経済を支える。
景気が悪くなれば、累進課税により、税額を下げ、国債を発行することにより貨幣の流通量を上げるよう政府が努力する。ちなみに今の安部さんがやっているのはまさにこれである。インフレにすれば経済は投資に向かうのは明白であるが、消費税を上げれば、経済は減退するし、またデフレとなり投資が無駄になる。と言うことは『失政』につながっちゃうかな???。

今は、消費に税がかかってしまうので、比較的安定した税収は見込めるが、景気といった点には無力である。失われた20年と言われるが、この間の経済政策といったら何をやってもだめであった。それは、たとえば、公共事業をやっても消費税の効果によりその効果が減退してしまう。財政投融資も制度自体破壊されたし。所得税、法人税の累進制も破壊されている傾向にあり、あるところにはあるけれども、税として吸い上げられない状況である。消費税にシフトした結果である。
さらに今般の消費税増税である。すでに、勤労中堅層の家計は5%の消費増税以降破壊されているけれども、まさに国民生活全体の家計の破壊を企てているといっても過言ではない。
結局、景気全体を減退し、税収見込み通りに取れないのが消費税であり、頼ること自体が危険と言わざるを得ない。その結果、債券を発行し公共投資をし、社会保障を手厚くしても消費税にその効果が減殺され政府による投資効果が税に直接吸い上げられ、波及効果は著しく低い。いつまでたっても景気が浮揚しないし、債務が増え続けることになる。
もはや、日本においては消費税の壮大なる実験は失敗したのである。これに反して、経済を減退させず、税収を確保する方法は現在一つしかないが、それを主張しているので本ブログは『逆流』なんだよな。徹底して税制を再編しなければならない。いや、シャウプ税制回帰でも良いくらいである。そして、公経済が私経済に感度良く即反映する税制を構築しなければならない。わかんないだろうな…。

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